前回は出塁率の定義と計算式を学びました。今回はいよいよ長打率の定義と計算式を作っていきます。
長打率は「塁打数 ÷ 打数」というシンプルな式です。第45回で塁打数の計算はすでに完成させているので、あとは割り算とIFERRORを組み合わせるだけ。長打率ができあがれば、次回のOPS(出塁率+長打率)まであと一歩です。
長打率とは何か
長打率は「1打数あたり平均何塁まで進めるか」を表す指標です。打率がヒットの「本数」を評価するのに対して、長打率はヒットの「質」まで評価してくれます。
| 指標 | 分子 | 分母 | 何を評価するか |
|---|---|---|---|
| 打率 | 安打数 | 打数 | ヒットの本数 |
| 長打率 | 塁打数 | 打数 | ヒットの質(長打力) |
打率は1.000を超えることはありませんが、長打率は超えることがあります。本塁打ばかり打つ選手なら、1打数で4塁打分カウントされるため、理論上は最大4.000まで到達します。つまり長打率は「割合」ではなく、「1打数あたりの平均塁打数」として読む数字なのです。
長打率の計算式
長打率 = 塁打数 ÷ 打数
第45回で塁打数(単打×1+二塁打×2+三塁打×3+本塁打×4)の列はすでに作成済みです。あとはその列を打数の列で割るだけで完成します。
=IFERROR(塁打数のセル/打数のセル, 0)
打率の計算式(第47回)と構造はまったく同じで、分子が「安打数→塁打数」に変わっただけです。打数が0の選手はIFERRORのおかげでエラーにならず、0を返してくれます。
例で計算を確認してみよう
例えば、こんな年間(野手)シートがあったとして、実際に計算を確認してみましょう。
SUZUKIさんの例(三塁打あり)
| 種類 | 本数 | 重み | 塁打 |
|---|---|---|---|
| 単打 | 9 | ×1 | 9 |
| 二塁打 | 4 | ×2 | 8 |
| 三塁打 | 1 | ×3 | 3 |
| 本塁打 | 0 | ×4 | 0 |
| 塁打数合計 | 打数:22 | ― | 20 |
長打率 = 20 ÷ 22 ≒ .909。1打数あたり平均0.9塁以上進めている計算になり、長打力の高さがよく表れています。年間(野手)シートの集計値ともきちんと一致します。
YAMAMOTOさんの例(本塁打あり)
| 種類 | 本数 | 重み | 塁打 |
|---|---|---|---|
| 単打 | 3 | ×1 | 3 |
| 二塁打 | 1 | ×2 | 2 |
| 三塁打 | 0 | ×3 | 0 |
| 本塁打 | 1 | ×4 | 4 |
| 塁打数合計 | 打数:22 | ― | 9 |
長打率 = 9 ÷ 22 ≒ .409。安打数は5本と少なめですが、本塁打1本が4塁打分まとめて加算されるため、長打率が打率(.227)を大きく上回る結果になっています。
YAMAOKAさんの例(長打ゼロの選手)
長打(二塁打以上)がまったくない選手の場合、塁打数=安打数になるため、長打率と打率が同じ値になります。
| 選手名 | 安打数 | 塁打数 | 打数 | 打率 | 長打率 |
|---|---|---|---|---|---|
| YAMAOKA | 7 | 7 | 22 | .318 | .318 |
安打7本がすべて単打のため、塁打数も7。打率と長打率がぴったり一致していますね。
打率・出塁率・長打率を3つ並べて見る
3つの指標が揃うと、選手の打撃の特徴がより立体的に見えてきます。
| 選手名 | 打率 | 出塁率 | 長打率 |
|---|---|---|---|
| SUZUKI | .636 | .733 | .909 |
| SATO | .357 | .357 | .464 |
| YAMAMOTO | .227 | .261 | .409 |
| YAMAOKA | .318 | .444 | .318 |
YAMAMOTOさんは打率.227と低めですが、長打率は.409と高くなっています。一方でYAMAOKAさんは出塁率.444と高いものの、長打率は打率と同じ.318にとどまっています。こうして3つの指標を並べて初めて、選手ごとの個性が見えてくるのです。
長打率が完成すると次はOPS
出塁率と長打率の2つが揃えば、いよいよOPS(On-base Plus Slugging)が計算できるようになります。OPSは「出塁率+長打率」という非常にシンプルな式ながら、打者の総合的な打撃力を1つの数字で表せる指標です。詳しくは次回解説します。
長打率のセルにも、第47回で学んだカスタム数値形式 .000 を適用しておきましょう。打率・出塁率・長打率がすべて同じ桁数で表示されると見た目が揃い、シートがぐっと読みやすくなります。なお長打率は理論上1.000を超える場合がありますが、.000 形式にしておけば「1.000以上」の値でも正しく表示されます。
- 長打率 = 塁打数 ÷ 打数。関数は
=IFERROR(塁打数/打数, 0) - 打率との違いは分子が「安打数→塁打数」になること。長打ほど高く評価される
- 長打がゼロの選手は塁打数=安打数になり、打率と長打率が一致する
- 長打率は1.000を超える場合がある(「割合」ではなく「平均塁打数」という考え方)
- 打率・出塁率・長打率の3つが揃うと、次回のOPS計算まであと一歩
次回予告
次回は「OPSとは何か:出塁率+長打率の意味」。OPSという概念の成り立ちと計算式、そしてなぜ野球でこれほど重要視される指標なのかを解説します。計算自体は出塁率+長打率を足すだけなので、あっという間に完成しますよ。
▶︎ 次回:【第50回】OPSとは何か:出塁率+長打率の意味



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