前回は年間(投手)シートの全列を揃えて、投手成績表を完成させました。数字が並んだ表はデータとしては完璧ですが、「シーズンを通じてどう変わったか」を直感的につかむには少し読みづらいこともあります。今回は投手成績をグラフにして視覚化する方法を解説します。
「グラフなんて難しそう」と思った方もご安心ください。Googleスプレッドシートのグラフ機能は、データを選んでボタンを押すだけで8割は完成します。あとは軸ラベルやタイトルを整えるだけです。
投手成績で「グラフにする価値がある」指標はどれか
年間(投手)シートには17列ものデータが揃っていますが、すべてをグラフにする必要はありません。グラフが役に立つのは「変化や比較を見たいとき」です。
| グラフの種類 | 向いている指標 | 何がわかるか |
|---|---|---|
| 折れ線グラフ | 防御率の試合ごとの推移 | 調子の上がり下がり、登板ごとの安定感 |
| 棒グラフ | 選手別の奪三振・与四死球の比較 | 投手ごとの制球力・奪三振能力の違い |
| 積み上げ棒グラフ | 試合ごとの投球回の内訳(先発・リリーフ) | チームとして誰がどれだけ投げたか |
この回では最もよく使う「防御率の折れ線グラフ」と「奪三振・与四死球の棒グラフ」の2種類を作ります。
グラフ①:防御率の推移を折れ線グラフで見る
防御率はシーズンを通じた「投手の調子のバロメーター」です。試合ごとの防御率(その登板の自責点×9÷投球回)を折れ線グラフにすると、好調期・不調期が一目でわかります。
まず、グラフ用の小さな集計表をフォーム(投手)シートの横か、別の「グラフ用」シートに用意します。SUZUKIさんの実データを例に使います。
| 登板 | 試合日(目安) | 投球回 | 自責点 | その登板の防御率 |
|---|---|---|---|---|
| 第1登板 | 1/25 | 3回 | 0 | 0.00 |
| 第2登板 | 2/1 | 7回 | 0 | 0.00 |
| 第3登板 | 3/22 | 1回 | 0 | 0.00 |
| 第4登板 | 4/5 | 4回 | 1 | 2.25 |
| 第5登板 | 4/19 | 2回 | 1 | 4.50 |
| 第6登板 | 5/3 | 5回 | 2 | 3.60 |
序盤は3試合連続無失点。4登板目あたりから失点が出始めているのが数字で追えます。
この表を作ったら、グラフの作成手順に進みます。
「登板」列と「その登板の防御率」列の2列を選択します。Ctrlキー(Macは⌘)を押しながらクリックすると、離れた列でも複数選択できます。
メニューバーの「挿入」をクリックし、「グラフ」を選択します。自動的にグラフエディタが開き、プレビューが表示されます。
グラフエディタの「グラフの種類」プルダウンで「折れ線グラフ」を選びます。スプレッドシートが自動で選ぶのが棒グラフの場合はここで切り替えてください。
グラフエディタの「カスタマイズ」タブを開き、「グラフと軸のタイトル」でグラフタイトルを「SUZUKI 登板別防御率」、横軸ラベルを「登板」、縦軸ラベルを「防御率(ERA)」と入力します。
「カスタマイズ」→「縦軸」で最小値を 0 に設定します。デフォルトでは自動調整されてしまい、わずかな差が大きく見えすぎることがあるためです。防御率は 0 が基準なので、0 スタートにすると実態をつかみやすくなります。
フォーム(投手)シートの各行には投球回と自責点が入っています。グラフ用の列に次の式を入れると、登板ごとの防御率が自動計算されます。
=IFERROR(自責点のセル * 9 / 投球回実数のセル, 0)
投球回が 0(登板なし)のとき 0÷0 になるので IFERRORで 0 を返します。第61回と同じ考え方です。
グラフ②:奪三振・与四死球を棒グラフで選手比較する
奪三振と与四死球は「投手の能力を比較するのに向いている数字」です。奪三振は多いほど良く、与四死球は少ないほど良い——この2つを選手ごとに並べた棒グラフを作ると、チームの投手陣の特徴が一目でわかります。
年間(投手)シートのデータをそのまま使います。実際の数値で確認してみましょう。
| 選手名 | 奪三振 | 与四死球 | 読み取れること |
|---|---|---|---|
| SUZUKI | 10 | 10 | 三振は多いが四死球も多め |
| NAKATA | 4 | 3 | 四死球が少なく安定した制球 |
| YAMAMOTO | 8 | 3 | 三振が多く四死球は少ない——理想的なバランス |
| SATO | 14 | 11 | 奪三振は最多だが与四死球も突出して多い |
| OKADA | 1 | 6 | 四死球が多く三振が少ない——制球に課題 |
SATOさんは奪三振14で最多ですが与四死球も11と最多——「三振は取れるが荒れ球」という特徴がグラフにすると一目でわかります。数字を並べるだけではわかりにくい「傾向」が、グラフにすると浮かび上がってきます。
年間(投手)シートのB列(選手名)、P列(奪三振)、Q列(与四死球)を選択します。離れた列を選ぶときはCtrlキー(Macは⌘)を押しながらクリックしてください。
グラフエディタが開いたら、グラフの種類が「棒グラフ」になっているか確認します。3列を選択した場合、スプレッドシートが自動で棒グラフを選んでくれることが多いです。
選手数が多い(5人以上)場合は「横棒グラフ」のほうが選手名が読みやすくなります。「グラフの種類」で「横棒グラフ」に変更してみて、見やすいほうを選んでください。
「カスタマイズ」タブでグラフタイトルを「投手別 奪三振・与四死球」と設定します。奪三振と与四死球の2系列が色分けされ、自動で凡例が表示されます。色は奪三振を青系、与四死球を赤系にすると「良い数字・注意が必要な数字」として直感的に読みやすくなります。
グラフを作るときに知っておきたい2つのコツ
未登板の選手(D.MIWAさんなど)はすべての数値が 0 です。グラフの範囲にこれらの選手が含まれると、棒グラフの「0の棒」が並んでしまいシートが見にくくなります。
対処法は2つあります。①グラフの選択範囲を登板のある選手の行だけに絞る、②年間(投手)シートで試合数が 0 の行を非表示にしておく——どちらも有効です。運用に合わせて選んでください。
グラフは年間(投手)シートの右側の空きスペースや、専用の「グラフ」シートに配置しておくと便利です。フォーム(投手)シートに新しい登板データが追加されるたびに、グラフが自動で更新されます。
グラフを動かしたい場合は、グラフをクリックして右上の「⋮」メニューから「グラフを移動」を選ぶと別シートへの移動もできます。
グラフを読んでチームに活かす
グラフは作ること自体が目的ではなく、「読んで判断に活かす」のが本来の目的です。今回の実データから読み取れることを整理してみます。
- SUZUKIさんの折れ線グラフ:序盤3登板は防御率 0.00 の好投。4〜6登板目で失点が出始め、防御率が上昇。シーズン後半のコンディション管理が課題として浮かび上がる
- 奪三振・与四死球の棒グラフ:YAMAMOTOさんは三振8・四死球3で最もバランスが良い。SATOさんは奪三振14と武器はあるが与四死球11と制球に難——登板機会を選ぶ使い方が有効かもしれない
- OKADAさん:三振1・四死球6という数字はグラフにすると一目で「制球力の改善が必要」とわかり、次のシーズンの練習方針に繋がる
数字だけでは「SATOさんは三振が多くて四死球も多い」とわかっていても、それが全体の中でどのくらい突出しているかはピンとこないことがあります。グラフは「比較」を一瞬で届けてくれるのが最大の強みです。
- 防御率の推移には折れ線グラフ——登板ごとの調子の変化が追える
- 奪三振・与四死球の選手比較には棒グラフ——投手の特徴と課題が一目でわかる
- グラフの作り方は「範囲選択 → 挿入 → グラフ → 種類を選ぶ → タイトルを整える」の5ステップ
- 縦軸の最小値は 0 にする、未登板選手の行は除外するなど小さな設定が読みやすさを大きく変える
- グラフはデータに連動しているため、フォームに新しいデータを入力するたびに自動更新される
- 次回からは第8章・ランキングシートの自動化に入ります
次回予告
次回からは第8章「ランキングシートを自動化する」がスタートします。第67回は「ランキングシートの設計思想:なぜ別シートにするのか」。打率・本塁打・打点など各部門のランキングを自動で並べ替える仕組みを、ゼロから組み立てていきます。



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